KOHEI NAWA

本展では《PixCell》をはじめとする、名和の代表的な立体作品や平面作品のシリーズ、マテリアルサンプル、テストピースなどが展示された。

展示は、秒速一センチほどで移動する麻のキャンバス上に白い絵の具をドット状に垂らすことで描くペインティング作品《White Code》によって壁面を構成された一階からはじまる。ゆらぎながら連続する絵の具のドットは、キャンバス上で雫のボリュームを保ちながら硬化し、モールス符号やプログラムコードが氾濫したかのような光景を描き出す。そこには、デジタルとフィジカル、コードとマテリアルが重なり合いながら立ち現れている。

2階は《PixCell》および《Prism》シリーズを中心に構成される。壁面には、4点の《Prism》シリーズを展示。プリズムシートに覆われた箱（セル）の中に現れては消えるスニーカーや植物の種子のイメージは、情報化社会におけるリアリティの在処を問いかけている。

最上階は、立体・平面作品に加え、複数のマテリアルサンプルやテストピースによって構成される。ガラス球・流木・植物の種子・貝殻といった多様なマテリアルたちと、《Trans》《Mol》《Velvet》などの各種彫刻作品シリーズを混在させながら陳列する《Material Shelf》が、名和の着想や制作プロセスの一端を伝えている。特に、最下段に並ぶ《Velvet》シリーズは、名和の父親が所有していた全46冊に及ぶ思想家の全集をモチーフとして制作されており、名和のパーソナルな記憶がうかがえる。

名和は、情報技術をはじめとした先進的なテクノロジーを積極的に制作プロセスに組み込みつつ、一貫して、感性と物質性の関係に焦点を当ててきた。本展では、鑑賞者それぞれが作品を通じて情報と物質の流れに入り込み、名和の視点を追体験する展示となった。