彼岸より From the Edge
2024年1月、ダンサー・田中泯と名和のコラボレーションを主軸とする舞台芸術作品「Dance『彼岸より』」が、山梨・甲府のYCC県民文化ホールにて上演された。SandwichはMadada Inc.とともに企画・制作を担当。
既存の舞台・劇場を大きく飛び越えた実験的な活動を展開し続け、身体と世界の関係性を追い求める田中泯。その活動のひとつに、拠点である山梨県の山村でかつて決行された「白州フェスティバル」がある。日本における野外芸術祭の先駆とも言えるこの催しに、名和は大学在学中、ボランティア・スタッフとして参加しており、その経験は創作活動に強い影響を与えている。
そんな二人による初のコラボレーション作品である本作では、鴨長明の随筆『方丈記』にあらわされた無常観を出発点とし、田中泯が問い続けてきた身体と気象、都市の外部といったものたちが接続される。舞台上では、泥や霧が絶えず姿形を変えながら空間を満たす中、多くの文化において死と再生を司るとされてきたハゲタカが時空を超越するかの如く佇む。観念と物質性が呼応する”場”としての舞台は、田中泯の踊りをともなって、うつろいゆく一つの現象へと至る。それはまさに、彼岸から此岸へと寄せては返す波が描く静かなランドスケープである。