Material and Book Shelf
《Material and Book Shelf》は、種々のマテリアル、テストピース、スタディ、立体小作品などを混在させながら棚に配することで、名和の創作を取り巻く物質と時間、そしてそれらを感覚する身体性をあらわした立体作品。その内容は、「Prism」や「Velvet」といった作品シリーズにはじまり、「Ether」や「Trans」の小作品、「Black Field」や「Cell Field」といった近年の実践、その他多数のマテリアルや偶発的に生まれた造形のかけらまで、多岐に渡っている。
本作は、名和の祖母の家の本棚を起源としている。ここは名和が幼少期を過ごした場所であるとともに、大学院卒業後の一定期間アトリエとしても使用されており、「PixCell」をはじめとした作品アイディアの原型が育まれた場所でもある。本作では、かつて父親が所有していた『レーニン全集』全46巻(現在は処分済)から着想した「Velvet」シリーズを筆頭に、名和の私的な記憶と物質性、時代性といったものが混じり合いながら共存している。
棚の中に並べられたオブジェクトたちは、相互に参照と対比を繰り返しながら、独自のネットワークを築いていく。同時に、肉や植物、油絵具、樹脂、金属、鉱物といったマテリアルたちは、それぞれ異なる時間軸でその姿を変えていく。本作は、物質・時間・感性の各次元にまたがる収蔵庫であり、可能性の孵卵器でもある。