個展:Photon Camp


アメリカ・ロサンゼルスのPace Galleryにて、名和晃平の個展「Photon Camp」を開催いたします。本展は名和にとってロサンゼルス初となる個展であり、代表的な二つの彫刻シリーズ「PixCell」と「Prism」からなる新作20点を一堂に集め、ギャラリーのメイン展示空間の建築と直接呼応する、統一感のある環境を創出します。
名和は、絵画・彫刻・インスタレーション・建築・パフォーマンスといった多様な領域において、伝統的/非伝統的なさまざまな素材の特性を引き出しながら、物理空間と仮想空間、人工的な力と自然の力、個と集団のあいだに生まれる繊細な関係性を探究してきました。こうした実践の核にあるのは、情報技術をはじめとした、時代や文化を横断するテクノロジーへの強い関心です。作品に通底する視覚的な歪みや変容は、私たちと物理世界の関係や、そこにおける知覚体験にデジタル技術がどのような影響を与えているのかを問いかけています。
本展では、知覚や感覚に対する名和の広範な探究が前面に押し出されるとともに、近年の制作における新たな方向性が示されています。名和にとって作品とは、単一の解釈によって固定される静的な存在ではありません。それはむしろ、無数の光子(フォトン)がある瞬間、奇跡的に集まることで立ち上がる、ある種の現象なのです。キャリアを通じて継続的に展開してきた「PixCell」と「Prism」の両シリーズを初めて同時に構成する本インスタレーションは、自然と人工、現実と虚構、聖と俗のあいだに生じる緊張関係を探っています。
1995年の阪神・淡路大震災や、2011年の東日本大震災といった災害の記憶もまた、名和の世界観や制作活動、そして本展の構想に深い影響を与えています。それは、本インスタレーションに配置されたオブジェを「漂流物」として捉える名和の姿勢に集約されているでしょう。島国である日本は古来より、外部からやってくる漂流物を受け入れ、内部に混淆させることで文化を醸成してきました。世界を満たす物質循環の中で、さまよい、淀み、誤配された漂流物たち。そこには、惑星規模での文明の循環性が象徴されています。変容や無常といったコンセプトが作品全体を満たし、破壊と再生のサイクルにまつわる思索へと鑑賞者を誘います。
本展で発表される「PixCell」および「Prism」の新作には、シュルレアリスムの歴史に対する名和の持続的な関心が反映されています。動物の剥製をはじめ、名和が人生のさまざまな時期や場所で手にしてきた蒐集物を取り入れたこれらの彫刻では、先端的なテクノロジーや制作手法と、アナログな素材とが並置されています。約25年前に制作を始めた「PixCell」シリーズでは、透明な球体(セル)でモチーフの表面を覆うことで、その下にある形態に対する知覚を歪めます。一方「Prism」シリーズでは、プリズム加工が施された透明な箱の中にモチーフを収め、鑑賞者の視点によって内部の像が分断・変容して見える構造を生み出しています。 そこではいずれも、視触覚的な体験を通じた新たなリアリティの創出が試みられているといえるでしょう。
本展の中心を成すのは、巨大なエルクの剥製をモチーフとした彫刻作品《PixCell-Elk#3》です。自然の持つ威厳を象徴するこのエルクを囲むように、作品たちは台座の上や床、壁などに配置され、統一感を帯びた環境が空間にあらわされています。虚空の彼方へと視線を投げかけるエルクは、その軸線に沿って展開するインスタレーション全体を統べる存在として立ち現れます。これらの彫刻群は一体となり、人工と自然の境界を押し広げる、ダイナミックで包括的なインスタレーションを構成しています。
展示期間:2026年4月11日(土) - 6月6日(土)
会館時間:10:00 - 18:00
閉館日:月曜、日曜
会場:Pace Gallery
1201 South La Brea Avenue, Los Angeles, US
photo: Nobutada Omote
Photon Camp