KOHEI NAWA

Ether (Equality)

 

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2023年6月28日、名和晃平の新作大型彫刻がフランス・セーヌ川の中洲に誕生

「フランスの新たな文化の中心地に立つ、高さ25mの彫刻作品」
2023年6月28日、彫刻家・名和晃平とDANAE.IOのチームによる高さ25mの新作《Ether (Equality)》が、フランス・セーヌ川に浮かぶセガン島に誕生予定です。同作は「égalité(平等)」をテーマに、オードセーヌ県が主催した国際コンペティションで選出されました。

 

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「セーヌ川の新たなシンボル、コロナ禍を乗り越えて待望の完成」
フランスの新たな文化の中心地として、ジャン・ヌーヴェルや坂茂といった世界的建築家を招いた大規模な再開発が進むセガン島。その一環としてオードセーヌ県は大型のモニュメント作品の設置を決定し、2019年に「égalité(平等)」をテーマとした国際コンペティションが開催されました。このコンペティションでは、上流のグルネル橋の下に位置する「自由の女神」像や、セガン島の音楽総合施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」、そして周囲の河岸に点在する歴史的彫刻群と呼応する作品が求められました。
名和は、フランスのデジタルアートを牽引するDANAE.IOとタッグを組み《Ether (Equality)》を提案。見事、世界中から集まった35作品の中から選出されました。コロナ禍の中での厳しい計画と制作を乗り越え、いよいよ2023年6月28日の完成を目前にひかえています。

 

「雫のかたちが生み出す、リズムとハーモニー」
高さ25mを誇る今作《Ether (Equality)》は、数ある名和の彫刻作品の中でも最大級。薄いシルバーピンクに輝くステンレスの彫刻は十二角形をベースとした多面体で構成されており、背後に建つラ・セーヌ・ミュジカルの多面球ドームと呼応しながら、セガン島を導く道標のようにそびえ立ちます。
名和が継続的に手がけるこの彫刻シリーズ《Ether》は、地面に落下する水滴のフォルムを観察し、そのシルエットを上下反転させながらランダムに積み重ねることでかたちづくられています。連続するさまざまなかたちの雫は視覚的なリズムをつくりだし、セーヌ川を伝って、あらゆる方角へと響きわたってゆきます。そこでは、地球上のあらゆるものにはたらく重力とそのハーモニーが奏でられています。セーヌの川面に立った一筋の水しぶきが伸び上がるとき、わたしたちはその残響を等しく感じることができるのです。

 

「フランスと日本を結んできた彫刻家・名和晃平」
京都を拠点にグローバルな活動を展開している名和ですが、中でもフランスとは深い関わりを築いてきました。
日仏友好160周年を記念した祭典「ジャポニズム2018」では、ルーヴル美術館のピラミッド内に金箔で彩られた高さ10.4mの大型彫刻《Throne》を、ロスチャイルド館に泡を使ったインスタレーション《Foam》を展示し、マレの狩猟自然博物館では個展「PixCell-Deer」を開催しました。これに先駆けて2017年に開催された、長谷川裕子のキュレーションによる展覧会「Japanorama. A new vision on art since 1970」では、坂茂の設計によるポンピドゥー・センター・メスを会場に、黒いシリコンオイルが降り注ぐインスタレーション《Force》を展示しました。また、振付家ダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品《Vessel》および《Planet [wanderer]》は、パリのシャイヨー国立劇場やルーアンのOpéra de Rouen Normandieをはじめとした全世界で公演を行なっています。特に《Vessel》は2020年、英国で最も権威あるパフォーマンスアワードとして名高い、ローレンス・オリヴィエ賞にもノミネートされました。他にも、2012SSではCOMME des GARÇONS、2017AWではANREALAGEとコラボレーションを行い、パリコレクションのショーピースを制作するなど、さまざまなかたちでフランスの文化芸術と日本を接続してきました。

 

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「フランス近代化の歴史を刻むセガン島」
設置場所であるセガン島の歴史を見ていくと、「égalité(平等)」というテーマがさらに鮮明に浮かび上がってきます。
パリの象徴の一つであるセーヌ川。ノートルダム大聖堂やエッフェル塔が建ち並び、世界遺産にも指定された一角のやや下流に、セガン島は浮かんでいます。同地は名前の由来となった化学者アルマン・セガンが18世紀末に皮革工場を設立して以来、セーヌ地方の工業の中心地として栄え、1929年に大規模な自動車工場がつくられると、フランスの近代化と工業発展の象徴として知られるようになります。同工場は、労働基準の厳しさや環境汚染から批判の対象となる一方で、先鋭的な労働組合の拠点としても利用され、絶えずその意味を読み替えられてきました。その後工場は、第二次世界大戦中に連合軍からの激しい空爆に晒され、多くの犠牲者を出すとともに、戦後の技術革新の波に呑まれ、1992年に解体を迎えました。
2009年、そんなセガン島を文化の中心地として再興すべく、ジャン・ヌーヴェルをディレクターとした再開発計画が始動。これはアートセンターやオフィス・商業施設を含む大規模な計画であり、2017年には日本を代表する建築家の一人である坂茂の設計によって、音楽総合施設ラ・セーヌ・ミュジカルが完成しました。
このようにセガン島は、フランス発展の功罪を記録した歴史的地点であり、21世紀を生きるわたしたちが人と人、人と環境の関係性を紡ぎ直すための始点にふさわしい場所といえるでしょう。

 

名和晃平(Kohei Nawa)
彫刻家/京都芸術大学教授
1975年生まれ。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。2009年、京都・伏見に「Sandwich」を創設。
名和は日本の京都を拠点に活動する彫刻家であり、一貫して独自の「セル(細胞・粒)」の概念のもと、彫刻の「表皮」に焦点を当てながら、ジャンルを横断した数々の作品シリーズを発表しています。これまで、モチーフを大小の透明球で覆うことで情報化時代を象徴した《PixCell》、重力で描くペインティング《Direction》、シリコーンオイルが空間に降り注ぐ《Force》など、彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきました。近年では、広島のアートパビリオン「洸庭」をはじめとした建築のプロジェクトや、振付家ダミアン・ジャレとのコラボレーションによる、パフォーマンス作品シリーズにも精力的に取り組んでいます。

 

クレジット:
Ether (Equality)
2023, Stainless steel, paint, 25 × 3.5 × 3.5 m,
©Kohei Nawa | Sandwich Inc., Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE and Pace Gallery Installation view: Seguin Island, Boulogne-Billancourt, France
Photo: Emmanuelle Blanc

プレス問い合わせ:
Sandwich Inc.
612-8132 京都市伏見区向島藤ノ木町45-1
TEL&FAX: 075-468-8211 Email: office@sandwich-cpca.net
担当: シャキロワ・レイサン